やさぐれ歯科医院

白い天使クリスチャン・ゼル博士を目指す歯科医の戯言

若手にオススメの書籍 全身管理 補足

前回の補足なのでVer. 1.5となります。

前回紹介した「周術期管理チームテキスト」ですが

周術期管理チームテキスト第3版

周術期管理チームテキスト第3版

  • 作者: 公益社団法人日本麻酔科学会会員,日本手術看護学会会員,日本病院薬剤師会会員,公益社団法人日本臨床工学技士会会員,公益社団法人日本口腔外科学会会員,公益社団法人日本麻酔科学会
  • 出版社/メーカー: 公益社団法人日本麻酔科学会
  • 発売日: 2016/08/10
  • メディア: ムック
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勘違いしている人もいるようですが、手術関連についてだけ書かれていると思っていませんか。かなり厚い本なので正直な話いらない頁もあるのですが、典型的な各有病者の管理、キーポイントなどはかなりまとまって書かれています。

後日何箇所か写メってアップします。中身がわからんと買えないという人も多いでしょうから。

※写真追加しました。(2016/09/17)

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800ページほどある分厚い本なので全ての知識は必要ありません。

熱いのは「基礎疾患を有する患者の評価」。

かなりコンパクトに要点が書かれています。

 

評価ってそんなに必要?

全身状態に問題のある患者は「どのくらい悪いのか」の評価が必須です。

かかりつけ医から血液データなどが送られてきたらそれを元に評価しなければなりません。自分で評価できないなら、かかりつけ医に聞く or 大きい病院へ投げるべき。

評価なくして治療・処方は絶対にダメです

いやもう透析だろうが何だろうが普段通りの処方する奴の多いこと多いこと。

患者にとっては地雷原を歩いているようなもんですよ。

 

口腔外科の専門医を取ろうという先生は買っておいたほうがいいです。日常診療のみならず専門医取得の要件である「全身管理研修」にも非常に役に立ちます。

 

全身管理研修とは?

日本口腔外科学会の専門医制度施行細則、第19条に

本学会が認定する施設内の手術部あるいは麻酔・救急・集中治療等に係わる施設において一定期間, 全身管理,特に呼吸管理を研修しなければならない.

とあります。

要はどっかでちょろっと修行して来いや、というだけなのですが、これが所属する口腔外科によってクリアの難易度が天国と地獄。

 

天国

歯学部の口腔外科でしたら、大抵は隣の歯科麻酔科へ研修という形で非常に垣根が低い。普段顔を突き合わせている先輩後輩仲間ですからユルユルです。

多い所では毎日数件全身麻酔症例がありますから、数人が同時期に各人の「都合のいい日時だけ」参加して一気に20症例クリアします。まあそれでも症例の最初から最後までいたりする真面目な先生もいれば、

 

一度も手術室に現れず麻酔チャートに名前だけ記載してもらい20症例を提出

 

という事例も・・・。

凄い!他施設でクリアに苦しんでいる先生が知ったら刺されそうな案件です。

 

地獄

総合病院・医学部大学病院の口腔外科が大抵これです。

救急・麻酔研修は元々歯科医師にやらせない病院があったりしますが、これが一番きつい。大抵は教授が「何とかお願いします」と拝み倒して始まりますが、始まらない病院もあったりするんですかねえ…。

しかし始めるからには20症例だけでバイバイみたいな甘い講座はなかなかありません。少なくとも数ヶ月は麻酔科や救急に所属して口腔外科を離れることとなります。

そうなると皆一気にヨーイドンという訳にはいきません。ただでさえ人手不足なのに、2人も3人も働き手を減らす余裕などありません。そして最悪なのは何かの都合(家庭・留学などなど)で1人が行けなくなると、そこから下の代は専門医取得がそれ待ちでストップする場合があります。

年功序列という悪しき弊害ですね。

論文もある、ACLSも受けた、症例数もクリアしている、レポートも書いた、後は・・・全身管理研修だけなのに・・・という人も世の中にはいるわけです。

 

最後に

口腔外科学会は、専門医試験の要件としての全身管理研修は即刻廃止するべきです。

一切全く何もしていないどころかその場にいなかったのに症例提出できるような施設と、数ヶ月コツコツその科につきっきりでやる施設との格差がありすぎます。チェック機構などは困難ですから、バッサリ無くしてしまうのが一番不公平がありません。

全身管理研修自体は実のある人もいる(実のない人もいる・・・)ので、皆に等しく機会をつくるという点では非常に結構なことなんですがねぇ。 

わるいやつら〈上〉 (新潮文庫)

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