やさぐれ歯科医院

白い天使クリスチャン・ゼル博士を目指す歯科医の戯言

歯科業界よくある誤解 「対診書・照会状」

ぶっちゃけた話、歯科治療は口の中がメインなので全身管理は二の次、三の次どころか全くやる気のない先生もいます。

リスクを避けるには「診ない」のが一番手っ取り早く、かつ確実ですから、「高齢で高血圧の患者なんで、そっちで(普通の歯科治療を)やってよ」と、降圧剤を内服していて血圧も正常範囲な患者を大学病院の歯科にぶん投げる先生もいます。保険治療なんぞで危険な橋は渡りませ~ん!というスタンスも、ここまで徹底すると呆れるというか逆に清々しいです。

 

対診が必要な場合

この高齢化の御時世、健康体ではない患者も大勢です。上記のような、軽度の高血圧・糖尿病くらいでしたら大抵の歯科治療はそのまま行います。

しかし、「心筋梗塞で死にかけました」とか「〇〇で免疫抑制剤を飲んでいます」などある程度の重症度になると、応急処置くらいはやるとして今後のために情報集めが必要になります。そういう患者は基本的に「かかりつけ医」がいるはずですので、「対診書」や「照会状」という名目で通院先の医療機関に御手紙を書きます。

要は「そちらに通っている〇〇という患者にこんな治療を予定しているんですが、患者の詳細を教えてくださいな」というのをもうちょい丁寧に書いて送ります。これは「患者は嘘をつく」という永遠のテーマとの戦いの一環でもあるのですが、それはまた別な機会で。

照会状の書き方は本まで出ていますが、

そのままつかえる照会状の書き方

そのままつかえる照会状の書き方

  • 作者: 矢郷香,片倉朗,飯嶋睦,朝波惣一郎
  • 出版社/メーカー: クインテッセンス出版
  • 発売日: 2013/08/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 裏を返せばこんな「三輪車の乗り方」みたいな本が発売されるということは、それだけ歯科には「照会状」の書き方が滅茶苦茶な先生達がいるということです。 

 

書く内容ですが、何点か気をつける事があります。

 

「何を聞きたいのか」

患者のデータがほしいのか、これまでの経過が知りたいのか、処置に対する助言・忠告の類がほしいのか、聞きたい内容をしっかりはっきりくっきり書きます。返信に「欲しかった情報がない」とまた手紙を送らないといけませんし、あちらも二度手間です。

あえて詳しくは書きませんが「抜歯は可能ですか?」とか「インプラントは可能ですか?」という「この術式(歯科治療)できますか?」質問はナンセンスですし、最悪なのはこの質問しか書かない先生です。

 

「歯科用語は使わない」

歯科用語バリバリで御手紙を書く先生達は相当数います。開業医に限らず大学病院勤務の先生でもそうです。しかし、詳しく書こうとすればするほど相手には伝わりづらくなるだけなんですよこれ。

もう医科の先生達が理解できるのはテレビCMに出てくるような単語だけ、つまり「齲蝕(う歯)」「歯周病」「抜歯」「インプラント」くらいだと思っていいです。ですから使う単語もこれ以外は極力使わない方が・・・というか使うな

「歯周外科」や「上部構造」なんて書いても「はぁ?」としか思われません。ましてや「PD」とか「SRP」のような略語はド論外!

どれもこれも実際に見かけたものです。もうね、「医科に出す手紙に歯科用語使うな」ってのは国試の必修にしてもいいくらいだと思いますよ。 

 

最終決定を下すのは自分

そして一番大事なのは、「最終決定を下すのは自分」ということです。

いくらかかりつけ医の先生が大丈夫なんじゃない?と言っても、やるかやらないかは自分が決めることです。ですから、治療中に何か重大なトラブルが生じても「大丈夫ってゆったや~ん!!!」と騒いではいけません。

医科からの御返事はあくまで判断材料をくれるだけだと思いましょう。

 

ついでに

もう1点。地味にめっちゃ大事です。

「直接電話するのは可能な限り避ける!」

先日facebookで見かけたのですが、某歯科医師が患者の件で総合病院の脳神経外科の先生に直接「電話」で問い合わせをしたら非常に態度が悪かったと怒っていました。いやこれは逆ギレってやつです。

先生同士は全く面識がなく、患者に緊急性はない、患者が脳外に通院していたのは20年も前、しかも聞く内容がそれかよ!ってのを忙しい時にあれやこれやと電話口でやられたら態度も悪くなりますよ。

「節税対策にマンションいかがっすか?」という仕事中にかかってくるセールス電話は誰しも経験したことがあるでしょうが、恐らくあれと同じくらいイライラしていたと思います。何で電話で聞こうと思ったのか非常に疑問です。脳外の先生、本当に申し訳ありません。

 

まとめ

ハードルを上げようとしているのではありません。情報量は多ければ多いほど助かりますし、戻ってきた御手紙で暗に「その患者は手をつけると(色んな意味で)ヤバイですよ!」って親切に教えてくれることもあります。

上に書いたことは別に難しい事を書いているわけではなく、最低限これくらいは、という内容ですので、皆さんも危なそうな患者でしたら一筆送ってみましょう。

まあ、そのためには「危ないかどうかがわかる」のが大前提なんですが・・・。