やさぐれ歯科医院

白い天使クリスチャン・ゼル博士を目指す歯科医の戯言

コロナ狂想曲 鶴見大学歯学部教授 花田信弘氏の提言は信用に値するのか 1

「何が何でも3DSを広めるマン」こと鶴見大学の花田信弘氏がFacebookで何かヘンテコな提言をしており、しかも歯科業界の人達が大拡散しているらしい…という情報がTwitterで飛び込んできました。

 

おっ、今度は何を言い出したんだ…とFacebookを開いても、自分のTime lineにはそれらしき内容が全く見当たりません。おい大拡散してないやんけ。

 

うーん、ただでさえ少ない友人関係をさらに絞っていたのが仇になったか…どんな内容なんだろうな …いやしかしあんな花田氏でも一応は歯学部教授だからそんな簡単にトンチキな内容は書かんよな…いやしかしあの花田氏だからなぁ…など色々と考えたり考えなかったり…。

 

結局Twitterで内容をいただきましたが、読んで仰け反る内容で「いかにも彼が書きそうな内容ではあるが、いくらなんでもこれは花田氏の名前を騙る奴が出した怪文書に違いない…」と思っていたら、さすが歯科業界の各方面に「草」を放っているspee大先生、本人が投稿(すでに削除済らしい)した時のスクリーンショットを手に入れておりました。

 

うへぇ~やっぱり御本人だったのね。

Facebookで出回っている内容は、1枚目と2枚目をつなげた文章ですね。

 

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Facebookより コメント自体は削除済らしい…

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一つ一つ検証してみましょう。

 

唾液検査は第一選択になり得るか

新型コロナウイルス の実効再生産数を低下させるためには、サンプリングは鼻咽腔ではなく唾液検査が第一選択です。

先日、アメリカのFDA(食品医薬品局)が唾液検査を承認したというニュースがありました。

https://www.rutgers.edu/news/new-rutgers-saliva-test-coronavirus-gets-fda-approval

しかし、「承認しただけ」で、第一選択になるかどうかは今後研究が進んでからの話です。そりゃ実効再生産数を低下させるにはクシャミの危険性が高い鼻腔・咽頭からの直接採取より唾液検査の方が安全ですが、唾液検査の精度はまだまだ検討段階なのです。

個人の判断で勝手に第一選択にしないでください。

安全な方がいいだろ!という方は、そもそも「何のために検査するのか」を考えましょう。本末転倒です。

 

ちなみに新型コロナウイルスと唾液との関係のReviewを訳してくれているサイト。

うちのような暗黒ブログとは違い、どの回も学術的な超正統派ですね…。

俺も最初はこういうアカデミックなブログを目指していたのに…。

どうしてこうなった…。

 

洗口剤は有効なのか

実効再生産数を低下させるために飛沫感染の原因である唾液腺に由来する唾液のウイルスを殺菌力のある洗口剤で常に失活させることが大切です(洗口剤使用を推奨します)。

 

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唾液には呼吸器からの分泌物も混ざりますが、上記Reviewでそのような混入を防ぐため唾液腺開口部から直接採取した唾液からも検出できたことから、唾液腺自体に感染が及ぶ事があるのは間違いないようです。

で、確かに洗口剤を使用すれば一時的には口腔内の唾液に含まれているウイルスを失活させるのは可能だとは思うんですよ。

一時的には。

失活継続が困難な理由は「唾液は出続けている」という当たり前の事実です。

唾液は1日に1~1.5Lがジワジワ出続けているのです。高齢者はその半分くらいにまで減少しますが、それでも出続けているのは一緒です。「常に失活させることが大切です」ってのは、どれくらいの頻度で洗口剤を使わせるつもりなのでしょうか。

花田氏、もしかしたら「唾液は出続けている」という事を知らないのではないでしょうか。

 

昔のブログで、口腔内を1回消毒したら効果はどれくらい続くのか、という紹介をしたことがあります。 菌数だけなら10分もしたら元通りという結果でした。

もっとも、1日数回の洗口剤使用でウイルスの排出を抑えられ実効再生産数も低下させられる可能性も微レ存ですが、上記を鑑みると確率的には「鶴見大学が来年の国試合格率で東京歯科大学をブチ抜きトップ校になる」方が実現する可能性は高いと思います。

 

舌磨きは有効なのか

受容体のACE2は唾液腺だけでなく口腔粘膜と舌にもありますので舌磨きでウイルスにより死滅した細胞と生きたウイルスを舌磨きで除去することも大切です。

 

新型コロナウイルスはACE2受容体を介して感染します。

この受容体は全身にありますが、口腔粘膜・舌に多く発現しているという報告があります。

http://High Expression of ACE2 Receptor of 2019-nCoV on the Epithelial Cells of Oral Mucosa https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32094336/

そういう意味では舌磨きにも意味がありそうですが、やはりこれも研究段階です。

口腔ケアをすることでインフルエンザ罹患率が低下したという報告がありますが、新型コロナにも適応可能かどうかは未知数、そもそも研究自体のプロトコールが微妙で本当に口腔ケアが威力を発揮したか未知数、特に舌磨き単体の効果はよくわかっていません。

ちなみにインフルエンザウイルスは付着してから細胞内に侵入するまで数分~20分くらいと言われています。そういう意味では舌磨きがウイルス感染に対しどれくらい効果があるのは非常に興味あるところです。

しかし、結局はまだ効果のわからない治療に対し「大切です」と言い切ってしまう感性はかなりヤバいと思います。

 

 

Facebookの発言は削除されているらしく本当に発言したかどうかの裏取りは不可能となっていますが、これだけ歯科業界のSNSで「花田氏の提言」として拡散しているのであれば、御本人が発言しておらず名を騙る偽物のしわざなら否定の見解を出さざるを得ないと思います。否定しないのであればこれは本当に書いちゃったんだろうな…と。

 

あーこれ全部終わらせるのはかなり長くなるな・・・。

 

ニセ科学を見抜くセンス

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  • 作者:左巻 健男
  • 発売日: 2015/09/29
  • メディア: 単行本