やさぐれ歯科医院

白い天使クリスチャン・ゼル博士を目指す歯科医の戯言

コロナ狂想曲 鶴見大学歯学部教授 花田信弘氏の提言は信用に値するのか 2

前回はこちら…もう時間が経って忘れました?

俺もだ!

最初を読んだだけで中身が腐ってるってわかるんだしさ……もうこれ以上書かなくてもよくない?

 

……とか思って筆がピタッと止まっていたのですが、歯科医師連盟広報誌に載っていた花田氏の対談を読んだspee先生が激怒りブログをあげておりました。

いやーこりゃ酷い。

「酷い」以外の言葉がでてこないくらい酷い。

 

Facebookでは卒業の九州歯科と鶴見のOB達からは大人気だけど、放置すると業界にとって害悪でしかないですね。

 

花田氏もさぁ、先日の朝番組での「新型コロナは口腔ケアくらいで感染は止められない」で止めときゃよかったのに……

 

え、感染は止められないけどサイトカインストームは止められるかも?そんな方々のために仕方ないけど続きを書きました!

 

さてはて、前回の部分だけなら全く信用に値しない提言でしたが、続きの部分はどうでしょうか。

 

あ、COVID-19とかSARS-CoV-2とか書いてもいいのですが、素人や、花田氏を盲信する素人のような歯科医師にわからせるのが目的なので、正確じゃないのですが呼び方は「新型コロナ(ウイルス感染症)」に統一します。

 

 口腔内清掃で新型コロナによるサイトカインストームの予防は可能か

また、歯周病菌などグラム陰性菌のエンドトキシン(LPS)による新型コロナウイルス感染者のサイトカインストームを防止するためにこれまで以上に歯磨きとフロッシングを推奨し、歯肉炎のない状態を維持することが大切です。

 

花田氏の中核部分ですね。

この文章、色々と間をすっ飛ばしているから解説しようとすると結構ややこしくて面倒なの。 

 

学生時代のおさらいですが、エンドトキシンは細菌の外膜にある内毒素で、構成要素の一つがLPS。なのでエンドトキシン=LPSのように言われますが厳密には別物。ただ、大抵は形式上同義扱い。

経路はどうあれエンドトキシンが血中に入ると各種細胞に働き、インターロイキンのような炎症性サイトカインが分泌されます。

 

なので歯周病患者は歯周病菌のせいで普通のヒトより血中の炎症性サイトカイン(IL-6やTNF-αなど)の値が高いんじゃないの?と言われ、歯周病の研究でもよく見かけます。

しかし、これら炎症性サイトカインの血中基準値は一桁 pg/mlくらいで、歯周病患者でも基準値内か、ちょっと出たくらいの値をうろちょろする程度。しかも疾患特異性が低い上に、リウマチなんかの他の原因でもドンッと血中濃度が上がってしまいます。

 

ちなみに、歯周病治療した群の血中IL-6がmeanで24.4 pg/ml ⇒ 10.0 pg/mlと激的に下がったという報告があるのですが

そもそもスタート時のIL-6が二桁ってどういうこと?と読んでみたら、n=11なんですが、皆のIL-6が一桁な中で、1人だけ234 pg/mlと突出した値の奴がいてこんな結果に。 これが数字のマジックですな。

 

この234 pg/mlとかコントロール群の54.4 pg/mlといった値が歯周病由来かどうかはわかりませんが、他の論文を読んでも歯周病患者のIL-6は大体が一桁なので他の原因由来のイレギュラーな数値だと解釈するのが妥当なんじゃないでしょうか。

どうなんですかねペリオの方々。

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Vidal F. J Periodontol 2009 May;80(5):786-91.

 

IL-6やTNF-αは新型コロナでどれくらい上がるのか

武漢で新型コロナ患者150人(死亡68人、退院82人)のデータを出した有名な報告があります。

 

緑が退院した群、オレンジが死亡した群です。

IL-6も計測(赤枠で囲った部分)していてます。

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Ruan Q. Intensive Care Med. 2020 May;46(5):846-848.

最初見た時は「うぉ、すごい値だな……」と思ったんですが、これちょっとおかしい。値が高すぎる。ちなみに、1000 pg = 1 ngです。

血中IL-6は敗血症性ショックなんかだと何万~何十万 pg/ml超という突き抜けた値にもなりますが大抵が「pg/ml」で計測できる範囲なのです。

 

今回結構な数の論文を読みましたけど、新型コロナって確かにIL-6は上がるんですが、重症化してもそこまで跳ね上がらない報告ばかりなんですよね。ICU管理が必要だったり人工呼吸器管理していたような群でも、せいぜい数十~数百 pg/mlくらい。これはTNF-αなんかでも似たような数値。

 

症例報告なんかだとIL-6が1000 pg/ml超えてるやつもあるんですがね。

逆に珍しい。

 

多分この報告、pgとngの誤記ではないでしょうか。国内サイトや海外の様々な論文もこの元論文を引用してng/ml記載してるんですが、大丈夫これ……?

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日経メディカル Lancet誌から 重症COVID-19患者に免疫抑制療法を検討する

 

結局どうなのよ

長々と書きましたが、花田氏の文章を超超超最大限好意的に読み取るに

 

・歯周病だとLPSなどの影響で炎症性サイトカインが(僅かに)高い(かも)。

 ⇒わかる

・新型コロナは感染し炎症が生じれば細胞から炎症性サイトカインが分泌される。

 ⇒わかる

・新型コロナ感染の炎症が強くなれば細胞から炎症性サイトカインもドバドバ分泌されサイトカインストームになり重症化。

 ⇒わかる

・だから口腔ケアを頑張ってサイトカインストームを防止しよう

 ⇒わからない

 

この論法だと風が吹くと「いきなり」桶屋が儲かっています。

 

花田氏の論法をクリアするには、

1.口腔内細菌由来のエンドトキシンが新型コロナのサイトカインストームの後押しをする。

2.口腔内細菌由来の炎症性サイトカインが新型コロナのサイトカインストームの後押しをする

のどちらかが成立しなければならないのです。

 

1.口腔内細菌由来のエンドトキシン?

口腔内細菌からのエンドトキシンくらいで、新型コロナの炎症自体を強めてサイトカインストームを生じる後押しができるレベルにあることが全く証明できていません。

敗血症のように単体でサイトカインストームを生じるような桁違いのエンドトキシンの後押しがあるならわかります。しかし、蜂窩織炎でパンパンとかは別にして、通常の歯周病程度のエンドトキシンが新型コロナのサイトカインストームの後押しをし得る可能性がある、と考えるにはどうにも無理がありすぎます。

 

2.口腔内細菌由来の炎症性サイトカイン?

実際問題、歯周病患者の血中IL-6が多少高いからといって、口腔由来の炎症性サイトカインかどうかすらわからないのですが、ちょっとそこは考えないことにします。

口腔内細菌のエンドトキシンから生じた(かもしれない)炎症性サイトカインは、現状ではどの報告でも新型コロナのサイトカインストームを後押しできる量ではありません。

仮に、歯周病患者の血中IL-6やTNF-αなどがちょっと上がっているのが口腔内細菌由来だとしても、一桁 pg/mlという正常値の域を中々出られていない量を上乗せしたからといってサイトカインストームの後押しになるのでしょうか。

これもどう頑張っても無理筋です。

 

いや他の理由が原因なんだ!と仰るなら、是非ともその理由・推察内容を教えていただきたいものです。

 

 

……という訳で、今回の部分も全く信用できない内容でしかありませんでした。

 

まとめ

最後は書きたくない気持ちから失速した感ありますが、無駄に長くなるからやりたくないんですよこのシリーズ!本稿だって文字数は半分くらいにまとめたかったのです。

本当は口腔内細菌と消化管との関係とかも書かなきゃいけないんだろうけど、それやったらもう終わらないからねこれ。

 

あっちの文章は短いくせに凄い量の「嘘・大袈裟・紛らわしい」が詰まっているから調べること多すぎ!

もう嫌だああああ! 

 

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