疼痛・・・とは?
臨床をしている歯科医師ならば誰でも1度はカルテに書いたことがあるでしょうが、昔から患者の「痛み」を「疼痛」と書き表していました。
患者が「痛い!」と言えば、ズキズキとかシクシクとかジンジンとか痛みの種類に関わらず、ざっくばらんに全て「疼痛」だったのです。
しかし、この慣れ親しんだ「疼痛」、最近は痛みの領域では使わない流れになってきています。
「疼痛」 は疼く痛みですので,日本ペインクリニック学会誌では 「世界疼痛学会」 などの固有名詞に使用されている場合を除いて,「疼痛」 ではなく 「痛み」を使用するようにしています.
例:神経障害性疼痛⇒神経障害痛
固有名詞以外では「疼痛」って言葉使うなよ!ということです。
何故「疼痛」ではだめなのか?
日本ペインクリニック学会用語委員会. Pain の和訳―用語委員会からの提言―
要は、明治の頃に編纂された医学辞典でpainを「疼痛」と訳し始め、漢字二文字で音の響きもよく論文にも使いやすいため、以降延々と「疼痛」が主流となっていました。しかし、一般の辞典では「痛み」と「疼痛」は別物として記載されていました。
字の成り立ちからしても「疼」は疼く(ズキズキ)で「痛み」の性質を表しており、painの訳語として適切な日本語は社会の一般的な解釈の「痛み」で、「疼痛」ではない・・・ということらしいです。
ただ、医療従事者の中では「疼痛」という言葉が定着してしまっているので、ただちに「痛み」に変更するのは現実的でなく、しばらくは用語集も併記でいくとのこと。
今後は?
ただちに変更は現実的でない、ということは徐々に変更していくのでしょう。日本語としてもそれが妥当だと思いますし、恐らくはこのまま「疼痛」という言葉は「痛み」という意味では使わなくなると思われます。
さよなら「疼痛」・・・患者が「疼くんです」と言うその日まで・・・。
じゃあどうすればいいの?
今までのように術後のカルテに「創部:疼痛あり」なんてのは書かずに、単に「痛み」もしくは「〇〇痛」にすればよいだけです。
簡単ですよね・・・簡単なはずなんですよ・・・。
しかしながら「疼痛」って慣れ親しみすぎて無意識に使ってしまい、「あっ!また言っちゃったよ!くそっ!」と何度も敗北感を味わっています。
何より「痛み」だとオツム弱そうに見えますし。
漢字の視覚的効果ってスゴイですね。
おまけ
「お痛みありませんか?」
これもよく聞く台詞ですが実は間違った表現なのです。
何が間違っているのでしょうか。考えてみましょう。
正解は次々回!

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